2020年4月21日の深夜、5月物の原油先物商品の価格がクラッシュしました。
元々、コロナショックの影響で世界中の経済が止まっており、工場も稼働していなければ、自動車も飛行機も動かない。
エネルギー消費量が極端に減っているという状況にあり、原油価格はかなり下がっていました。
そこに来てのOPEC減産交渉決裂です。
これによって、直近の原油先物(5月物・5月限)価格がみるみる下がっていきました。
最終的には、原油先物を買っていた場合、-40.32ドルという価格を付けました。
マイナス価格というのは、史上初の出来事です。
この状況は、保有している原油を「40ドル上げるから引き取って下さい!」ということです。
なぜ、40ドル支払ってまで引き取って欲しいのかというと、原油を保管しておく貯蔵庫がリミット近くまで来ていたからです。
原油を買った状態にしていれば、原油を引き取らざる得なくなります。
そうなったときに、保管しておく場所がありません。
これに焦った投資家が一斉にブン投げたのが真相だと言われています。
以下、構造に関して、もう少し詳しく解説していきます。
今回の原油ショックの大きな要因となったのがOPEC(石油輸出国機構・中東&アフリカ諸国)とロシアの原油減産交渉の決裂です。
ロシアは地理的にも近い、ヨーロッパ諸国に自国原油を売っています。
減産することは、供給量が減り、価格が安定化もしくは高くなるため、ロシアにとっては基本的にメリットしかありません。
一方のサウジアラビアの視点に立つと・・・
一方のOPECの実質的なリーダーであるサウジアラビアは、世界最大の産油国です。
減産することで安定利益を望めますが、元々産出コストも安いため、そこに応じる必要が特別ある訳ではありません。
減産に応じず(より増やす)、供給価格を下げることで、ロシアからヨーロッパに対するシェアを奪うことを考えました。
一時的に利益が落ちようとロシアからシェアを奪って、その後にタイミングを見て価格を戻そうという考えです。
サウジアラビアが、もう一つターゲットにしているのがアメリカのシェールオイルです。
シェールオイル自体は以前より知られたものだったのですが、
当時は技術が追い付いておらず、産出コストの高い原油のため、開発されていませんでした。
それが技術革新によって、採算とれるラインにまで来たため、シェールオイル開発が急激に進みました。
※出典:経産省「エネルギー白書2015」
その結果、アメリカは原油大国となりました。(元々原油大国でもあります)
サウジアラビアはこのシェール企業を潰すことを考え、減産に応じなかったという側面もあります。
シェールオイルの産出コストは、通常の油田開発から産出コストより高いと言われており、$30-40/バレルが採算ラインと言われています。
一方のサウジアラビアの産出コストは一桁ドルと言われています。
ライバルとなり得るシェール企業を潰しておくことで、今後も世界の原油価格を中東が握ることが出来るのです。
この様な国と国の事情とコロナショックという2つの大きな要因からオイル価格は大きく下落していきました。
また、先物商品の特異性として、期限と現引きというものがあります。
今回、原油ショックを引き込んだ金融商品は原油先物の5月物です。
先物商品というのは、そもそも、生産者と加工会社を保護するために始まったものです。
例えば、小麦を作るには、1年前から畑を耕して、種を撒いて、収穫して、そして売る。
しかし、この1年の間に何が起きるのかは分かりません。
悪天候になったり、バッタが大量発生したり、小麦が病気にかかったりし、大不作になるかもしれません。
そうなると、生産者は安心して仕事をすることが出来ません。
逆に天候も良く、その他のトラブルが起きることもなく大豊作になることもあるかもしれません。
小麦加工会社からすると、小麦が不作時は小麦の仕入れ価格が上がり、豊作時は仕入れ価格が下がるという状況になります。
毎年、毎年、仕入れ価格が大変動するとなると、小麦加工会社は安定的な経営が出来ません。
そこで、加工会社は生産者に対して、先に平均価格の小麦代を支払ってあげ、共に安心、安定の下、働こうというのが先物取引のはじまりです。
原油においても、同じで先に原油の購入価格を決めて、その価格で購入してあげよう!というものです。
商品先物の世界では、商品をそのまま引き取る、引き受けるということが出来ます。
原油であれば、投資家は原油そのものを引き取る、引き受けることも可能です。
上記の小麦加工会社の様に本当に小麦を必要とする会社の場合、小麦を仕入れても基本的には何も問題ありません。
しかし、金融商品の取引として利用している人はどうでしょうか?
小麦や原油、そのものを引き取るとなった時、卸す先、引き取り先があるのれあれば別ですが、普通はありません。
そうなると商品自体引き受けることは出来ないので、買いポジションをしているのであれば、売り払う(ポジション解消)必要が出てきます。
尚、売りポジションをしていた場合は、本当は小麦も原油も持っていないので、
どっかから調達してきて、商品として引き渡さなければいけなくなります。
結論から書くと、日本国内の商品会社を利用して取引の場合、そこまで大きな被害が出た訳じゃなさそうです。
5月物の期限が4月21日でなく、4月17日に6月物にロールオーバーさせていました。
そのため、期限の4月21日当日においても、下げ幅に大きな余裕がありました。
その状況からの暴落だったので、26ドル前後→20ドル前後までで済みました。
勿論6ドルは大きな値幅ではありますが、そこまでインパクトのある数字でもありません。
DMMの場合、5月物の期限が4月21日でした。
WTIのオイル価格が下がっていく影響をモロに喰らっていたのですが、
マイナス価格を付けるということが、商品会社側も想定外だったようです。
カバー先の金融機関がいなくなったために、0.9ドル付近でシステムが止まりました。
つまり、買い手がいない状況だったという訳です。本当か?????
翌日には6月物にロールオーバーされ、0.9ドル→20ドル近くに原油は跳ね上がりました。
一方で、多額の調整金(約23,000円/枚)が発生して、両方の相殺で大きな損益は無かったようです。
仮に、システムが止まっていなかった場合は、とんでもない損失を出した投資家がいたはずです。
カバー先の金融機関が本当にいなかったのかの真偽は不明ですが、一部の投資家にとっては幸運だったのは間違いありません。
投資家youtuber として大人気者のJINさんもその1人でした。
ショートポジションサイドの人達は強制的にロスカットが働いたようです。(ソース:響@トレーダー)
ロスカットになったので、この場合はロールオーバー云々が関係ないはずです。
原油商品は当然マーケットで取引をされています。
しかし、どれも触らないことをお奨めします。
大きくは2つの理由からです。
理由は、一番初めに書いた原油が下がっている理由
が解消されていないからです。
最低でもどちらか解消されない限りは、価格が安定化することはありません。
その証拠に6月物の原油は一時18ドルまで回復しておりましたが、
結局、下がり始めております。(2020.4.27現在)
2020/5/21に向け、一直線で落ちていくのかまでは分かりません。
しかし、先の原因の内、1つでも解消されない限りは、下がっていくことは必至です。
ショート持った場合は、期日前にポジション解消する方が良いです。
更に、マイナス経験を商品会社がしたことによって、
この1ヵ月の間でマイナス価格に対応したシステムを組んでくる可能性もあります。
投資家にとっては、マイナス価格であろうと商品売買出来ることは望ましいことです。
前回、0ドル近辺で価格がストップしたから大丈夫と思っていても、それが再現するかは分かりません。
この点に関しては、商品会社に聞くのが確実です。