今年は4件、契約の更新を迎えます。
で、3件に関しては7月中に決着を付け、2件は賃上げ了承して貰い、1件は退去ということになりました。
家賃はざっくり2万円上げたので、2件で4万円/月、年間50万円程度の売上増になります。
退去も発生していますが、この部屋に関しては最も高く貸せる部屋なので、寧ろ出ていって貰いたかったので問題ありません。
寧ろ狙い通りといった感じで、退去前なので部屋を見られない状況にも関わらず、今回提示した額よりも大幅上げた新賃料を設定したのですが既に数件話が来ています。
で、家賃交渉時に何をしたかと云うと以下2点
賃料交渉が来ても「合意しなければOK」みたいなネット記事やYoutube動画が多々あります。
正直、大家にとっては、イイ迷惑でしかないです。
そして、ケースにも拠りますが、大家が本気になればこんなの殆ど意味ないってことも分かっておいた方が良いです。
今回、退去する人は恐らくこれ系統ものを見たのか、更新可否期限の2日前に「賃料上げには合意しない。これまでの賃料で更新はする」とメールで伝えてきました。
ギリギリに更新の可否を伝え、双方合意が無ければ賃上げは出来ないということなのだろうと思います。
「はっ?この俺様にそんな脅しや心理戦が本気で効くと思っているのか?」
この客は法人契約をしているので、回答を受け取った翌日に会社に連絡し「貴社の社員に賃上げ拒否されたが、これは会社としての回答で良いのか?」「賃上げ拒否なら、したくはないが貴社相手に訴訟する」と伝えました。
会社側も期限ギリギリに、社員がそんな返事をしていたとは知らず「ちょっと待って!確認するから!」という感じになりました。
で、翌日の夜に、客本人がボクの所に直接話しに来ました。
流石に会社側から注意を食らったのだろうと想像しています。
当然だ。
一社員の家賃の問題で上場企業が裁判なんてする訳ないし、社内規定の家賃手当を1人の都合で変更なんて大企業に出来る訳がありません。
「もう少し安くして」「アレしてコレして」と言ってきたが、全部突っぱねました。
「新賃料に合意しないなら更新しない」「仮に居座るなら賃料は受け取らない」「賃料受け取らないことは契約者である会社にも伝えている」「仮に入金してきても供託所に預ける」「で訴訟する」と淡々と伝えました。
こちらの覚悟が分かったらしく、もう少しだけ検討時間をくれというので1週間の猶予を与えました。
で、1週間後に「退去する」と伝えてきて、完全勝利で終わりました。
「訴訟する」というのも嘘ではなく、民事調停までは大した費用も掛からないし、こっちは時間に余裕もあるので、本気でヤルつもりでいました。
そのため、賃上げを通知する何年も前から根拠となる資料は、常日頃からルーティンワークの一つとして、当然に集め固めていました。
少額の訴訟の場合は本裁判の前に調停を行うことになっています。簡単に言えば、当事者同士の話し合いを裁判官と調停員の前で行って、判断して貰うということです。
本裁判と違って費用は安く、争う金額によって変わってきますが、数千円レベルです。
話し合いの場所は、基本的には最寄りの簡易裁判所となり、当事者に対して「いついつの何時に裁判所に来て下さい」となります。
ボクは時間の融通はどーにでもなりますが、相手方は個人(ex:サラリーマン)なら会社を休む必要が出てきます。もしくは、それこそ代理人を雇う必要が出てきます。
この時点で普通の人は、大体降りることも想定済みです。
法人の場合は先にも書いた通り、一社員の家賃のために訴訟事なんてする訳ありません。大企業なら尚更です。
民事調停で決着しなかったら、所謂、裁判になるのだが、これもヤルつもりでいました。
費用的にはザックリではありますが
2万円×24ヵ月+更新料 ≧ 弁護士費用
デベ時代にB2Bの賃料交渉は散々見ており、仮に裁判になっても、賃上げの3要件を満たしているため、完全敗北はないと確信がありました。
根拠となる資料や何も集めているので、寧ろ勝てるくらいに思っているので、一切引く気はありませんでした。
家賃交渉を行うに際しては、以下3要件を満たす必要があります。
3要件自体は契約書にも、その事を記してあるのが普通です。
これらを満たしていなければ、賃料を上げてはいけないという訳ではないですが、最悪、裁判になった場合、不利な立場になる可能性が高いです。
東京23区内の土地建物になるので、固定資産税が増加しています。
こんなのは明白な事実だが、固都税の通知書を捨てていないなら、ソレを出せば良いだけの話です。
他にも公示地価等の行政が公表している土地データもあるので、そーいった資料を参考にすると良いです。
日本全体でインフレ傾向にあり、あらゆる物価が上がっています。人事院によって公務員の給与の引き上げも決定しています。
景気が良いとは思わないですが、裁判官や調停員に説明する必要出てきたなら「国が公務員の給与を引き上げているのだから内も上げさせて貰う」というつもりでした。
3番目の周辺賃料との比較に関しては、根拠資料をしっかり用意しておきました。
今回、2件に関しては、すんなり賃上げに応じて貰えたのは、本人達が経営者でお金持ちなのもあったと思いますが、この説明も多少は効いたのだろうと思っています。
SUUMOやHome’sあたりで賃料相場調べるのは勿論、過去の周辺賃料をスクショして保存してきました。
他にも、不動産情報サイトのAIによる賃料推移なんて出せるとこもあるので、そーゆーデータも保存しています。
これらの資料はお客様に説明するだけでなく、裁判になった時の根拠資料にするために日々ストックしています。
尚、今回の家賃に関しては、周辺同等物件に比べると客観的に見ても、かなり割安な賃料設定になっていました。
これを改善するために前回更新時の賃上げも考えていたのですが、丁度コロナショックの時期だったので断念しました。
こー云った事情もあり、かつ、改定した賃料に関しても尚周辺相場と比べるとまだ安い金額にも設定していました。
それを理解し、了承している客が複数件あるので、仮に調停(裁判)になってもこっちの言い分がある程度通るだろうと思っています。
はじめに書いたように、最近はネット情報やYoutube動画のせいで「賃料上げは拒否出来る」なんて思っている人も多いのですが、時間と金と知恵のある大家さんは訴訟の覚悟を持ってしまえば良いだけです。
『3要件満たしている』&『調停までやる覚悟』があるならば、5000円/月以上の賃上げを要求は調停において、満額回答は得られなくても、半分くらいは得られるんじゃないかなと思っています。
調停(&裁判)に直面したら費用面、時間拘束、根拠収集等、費用対効果を考えれば、普通の人は尻すぼみします。
今回、退去する人も会社からの注意もあるのでしょうが、「訴訟になっても弁護士だけが儲かるだけ」と弁護士費用に関しても理解していました。
今回、ボクは全く引く気が無かったのは、面倒毎となる調停まではやっても良いという覚悟を持っていたこともありますが、退去して貰って構わないと思っていたのもあります。
それは保有物件が1ヵ月として空くことのないツヨツヨ物件だからです。
仮に更新の4部屋が全てが退去になったとしても、全く問題ない。寧ろ、新規募集する場合は、今回提示した賃料よりも、更に上乗せして募集するつもりでした。
実際、直近空室になった部屋は、その賃料で決まっているので、決まるという確信もありました。
一方で即入居が決まらない田舎物件も保有していますが、そちらで仮に1000~2000円/月の賃上げで断られたら「仕方がない」と大家としては割り切ります。
だって『たかが数千円/月、数万円/年の話』で、退去や裁判なんて割に合いません。
仮に1000~2000円/月の話だと調停する気力は起きないし、弁護士に持ち込んでも「今回は諦めたら、どーですか?」と言われるのがオチです。
何があるかは分からないので、契約書内にあるトラブった場合の裁判所の箇所に関しては、当物件があるところではなく、物件所有者の管轄区内の裁判所に変更した方が良いとは思います。
2年で総額48,000円の金額に対して、弁護士に正式に相談するだけで最低5,000円/h~、正式に依頼したら30万円超となるのだから馬鹿らしい話です。
逆に考えれば、これは賃上げを拒否する客側にしても一緒なので、半分くらいの賃上げで改めて提示してみても良いかもしれません。
仮に本人が対処するとしても、会社を休んだり、裁判官や調停員に説明する資料を集めたり、作成したりとどう考えても費用対効果には合わないのだ。
物件によって、判断は変わってきますが、ネットの情報を信じる客に対して、強気な姿勢は大家には必要だ。