【不動産投資】タワマン、リスク
憧れのタワーマンション
タワーマンションに住みたいという人は多いと思います。タワーマンションに住むというのは、ある種、お金持ち、成功者としてのステータスの一面があります。私もお金持ちだったら、一度くらい住んでみたいと思います。
ただ、不動産業界に身を置いている人間としては、購入することは(多分)ないですね。あ、お金があったとしてもですよ。
購入するとすれば、売却前提で利益が出そうなものです。とは言っても、購入後、確実に値上がりするものなんて普通分かりません。
二子玉川のライズの高層マンションは販売時期も良かったらしく、4-5年経っても、購入時よりも高く売却できたなんて、大学の大先輩のお偉いさんから直接聞きました。
マンションのランニングコスト
マンションを購入すると賃料の支払いは無くなりますが、代わりに管理費や修繕積立金等、税金として固定資産税も発生します。
管理費&修繕積立
高級物件や高層物件ほど、充実した設備(複数台のエレベーター、トレーニング施設、パーティールーム等)が用意されています。
これらの設備を維持するための費用として、管理費が必要となってきます。
先日、TVドラマ等でも使われた『代官山アドレス』を見る機会がありました。
建設されて20年弱くらいなのですが、いまだに上層階は2億円以上の金額で取引されており、低層階でも1億円近くします。
購入時価格と変わらないどころか、値上がりしているような部屋もあります。こんなマンションに当たれば、本当に良いですが、そもそも数億円のお金が必要ですからね・・・
さて、この『代官山アドレス』、階数によっても違うのですが、30Fを超えるようなところでは、管理費で3万円超/月、修繕積立金も3万円超/月という金額です。低層階でも、管理費&修繕積立金とも2万円超/月です。これに駐車場が入ってくると、あの辺りだと、10万円超/月の固定出費が発生します。
マンション買ったのに、家賃になるような金額支払わないといけないとか。。。。お金持ちは凄いですね。
大規模修繕
通常、マンションは10-15年に1回くらい大規模修繕を行います。
大規模修繕とは、街中で稀に見るマンション全体を覆うように足場を組んで行っているやつです。足場を組み、外壁の塗装や修繕、交換(クラック埋め、シール直し、ファサードやカーテンウォール交換等)、屋上部の修繕(防水塗装、シート交換等)といったことを行っています。
AIやロボットは物凄い勢いで進化していますが、建設作業に関しては自動でロボットが作業をしてくれるという段階までは来ていません。そのため、マンパワーに頼らざるを得ず、非常に高いコストがつきます。
マンション購入した人は、積立金としてマンション管理組合に支払う(貯めていく)必要があります。中低層マンションの場合、大規模修繕費が特別跳ね上がることはないのですが、タワーマンションとなると違ってきます。
余談ですが、私も所有する4階建ての鉄骨マンションを何年か前に大規模修繕を行っていますが、1000万円近い費用が掛かりました。10年に1回は大規模修繕が発生すると考えると、100万円/年をオーナーとしては、責任持って貯めていかないと行けません。
マンションオーナーの中には、大規模修繕が来る前にマンションを売却する人も多数います。特に上物だけ保有しているオーナーはその傾向が強いように感じます。
タワーマンションの歴史
日本で一番最初に建設されたタワーマンションは、1976年に住友不動産が埼玉県に建設した『与野ハウス』と言われています。
歴史としては50年も経っておらず、建物高は66mで21階建てなので、我々が想像しているようなタワーマンションの高さとは言えないものです。現在のタワーマンションと比べれば、高さでは1/3とか、その程度の高さになります。
その後、タワーマンションを建築する際の足枷となっていた日照権や容積率等の規制緩和が行われて、1998年に三井不動産によって高さ180m超の『センチュリーパークタワー』が月島に建設されました。
これを皮切りに東京臨海部だったり、都心部においても数々のタワーマンションが建設され、現在の流れへと繋がっています。
タワーマンションの修繕費
我々が想像するタワーマンションの第一号は、先に紹介した1998年に建設された高さ180m超の『センチュリーパークタワー』だと思います。
この『センチュリーパークタワー』、今から2015年(築17年目)に大規模修繕が行われました。
工期は3年、費用は約20億円とのことです。
全部で760戸近くあるので、全戸数が埋まっているならば、約260-270万円/戸の費用になります。この費用は中低層マンションの大規模修繕と比べると3倍近い費用です。空室の部屋があるのであれば、この費用は上がってしまいます。
恐らくですが、大規模修繕を行うとなったときには、これまでに支払っていたランニングコストだけでは足りないので、別途費用が発生したはずです。
引退後でも支払えるのか?
現役時で、お金を稼ぐ能力があれば問題ないですが、引退していたときにポンと数百万円の出費なんて出来るのでしょうか?更にマンションが古くなって、住んでいる世帯数が減れば、残された世帯の負担は当然に大きくなっていきます。
タワーマンションの建物としての寿命が、どの程度なのかは分かりませんが、通常の建物だと50年程度が建替え時期の目安となります。それを考えると、後2,3回は大規模修繕が発生します。
通常のマンションでも修繕積立金の未払いが発生しているのが現状ですので、タワーマンションの高い修繕積立金ならば、余計にこのようなリスクが発生する可能性があります。現役引退後に別途の修繕積立金が必要となったときに「簡単に用意できるのか?」といえば、全ての世帯で「YES」とはならないはずです。
スーパーゼネコンが辞退
『センチュリーパークタワー』の大規模修繕では、何と日本を代表するスーパーゼネコン5社全てが辞退したというのです。超高層建物を『建てる』『取り壊す』は問題なく行っている彼らなのに大規模修繕はしないというのです。
2015年頃の話なので、東京五輪その他、彼らのところには受けきれないほどの建築案件があった時期だと思います。2016年頃に聞いた話ですが、この頃には『割の良い案件』『シンボリックになる案件』以外は断っていると言っていました。
なので『採算的に合わないのか?』『確立した手法がないのか?』『大規模修繕するなら新築工事』その辺の理由に関しては、スーパーゼネコンに勤める知り合いに会ったときにヒアリングし、追記いたします。
しかし、スーパーゼネコンが辞退はしましたが、大規模修繕自体は終了しているので、出来ないということはないようです。そもそも、オフィスビルにはなりますが、高層の建物は日本中、世界中に沢山あります。例:新宿三井ビル(1974年竣工・225m)、ロックフェラーセンター(1939年竣工・259m)等
これらのビルが一度も大規模修繕をしていないはずがないので、採算を考えなければ出来るのです。
そもそも修繕できるのか?
大規模修繕に関するリスクを色々書いてきましたが、そもそも大型の区分所有マンション(分譲マンション)の場合、簡単に大規模修繕を行えないという根本問題もあります。
先に書いたように、かなり大きな費用も発生しますので『大規模修繕をする・しない』の決議を区分所有者および議決権数で取る必要があります。
その数は区分所有者および議決権数の3/4、75%です(ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで滅ずることが出来ます)。
タワーマンションの場合は、戸数も非常に多いため、75%の賛成同意を得るとなると非常に困難を要するはずです。更に、これまで積み立てた修繕積立金以上の費用が発生するとなると、大きなトラブル事に発展するのは目に見えています。
10-15年に一度は必ずしなければならない大規模修繕ですが、いざ行うとなるとお金以前に区分所有者を纏めるというかなり大きな作業が必要となります。
それでもタワマン?
高級タワーマンションはステータス以外だけでなく、値崩れがしにくいという資産上のメリットもあります。
一方で、毎月の固定費として、家賃並みの管理費や修繕積立金、固定資産税が発生しますし、自動車を保有しているなら駐車場代も別途かかってきます。
また何階に住んでいるかどうかで、マンション内でのカースト、ランク付けがされるなんて、クソくだらないことも発生します。将来の建替えや大規模修繕時には、管理組合にてその決議を取らなければなりません。
色々考えてみると、タワマンには結構デメリットも多いです。
仮に私にタワマンを買うほどのお金があったとするならば、都心の住宅街にある低層の部屋数の少ないマンションを買いますね。ってか、マンションに住むなら賃貸にします。持ち家ならば、土地探して戸建て建てます。
持ち家vs賃貸に関しては、別途記事